漆らしい伝統色が温かみを生み出す小さな「盃」

オレンジがかった洗朱（あらいしゅ）、深みのある緑、こっくりとした黒色、そして華やかな金色。各色の漆で彩色されたガラスの盃は、手のひらに収まるくらいのほどよい大きさ。この伝統的で美しい色合いは、ベテランの漆職人が手掛けたからこそ生まれるもの。木曽漆器の工房「丸嘉小坂漆器店」独自の技術から誕生したガラス製漆器の盃は、フォルムの愛らしさも魅力です。「透き」通ったガラスと漆が「好き」あって結ばれ、誕生した食器ということから「すいとうよ」と名付けられたこのシリーズ。西洋からガラスが伝来した長崎の地の“お国言葉”にあやかったネーミングです。

お酒を注げばゆらゆらと躍る漆の色。一脚ずつ丁寧に、職人が漆を塗った盃は、それぞれの表情が微妙に異なり手仕事ならではの魅力を感じさせます。全色を揃え、来客の際は各自好みの色を選んでもらうのも楽しそう。酒器としてだけでなく、“脚付きの小鉢”としても大活躍してくれます。和え物やナムル、ナッツなどをちょっと盛り付けるだけで、お洒落な一品に。ずっと手元に置いておきたい、愛らしい盃です。

長年不可能とされてきたガラス器への漆の塗布ですが、丸嘉小坂漆器店と長野県工業試験場が共同研究を行い、1994年についにガラス製漆器が誕生。今では店の看板商品のひとつとなりました。「通常、漆は木地に塗るもの。木の表面には細かい穴が開いているので漆を吸い込み、漆と木地がしっかりと密着します。一方、ガラスは『面』ですから、漆を塗っても表面に載せるだけになってしまう。弊社では特殊な下処理を施して、漆とガラスを接着させています」（丸嘉小坂漆器店・小坂玲央さん）

木曽の伝統技を未来に向けて進化させる職人工房

創業80年余り。その歴史は400年とも600年ともいわれる木曽漆器の伝統を守りながら、時代に合わせたモノづくりを心掛けている丸坂小坂漆器店。木曽漆器のルーツを感じさせるような伝統的な器から漆のアクセサリーまで、幅広い商品を手掛けています。「若い世代にも漆について深く知ってもらいたい」と、今後は漆器を使ったカフェの展開も予定しています。

丸嘉小坂漆器店

長野県塩尻市木曽平沢1817-1

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