ルビンのこけし

Rubin’s Kokeshi

 

技と、心と、笑顔をつなぐ、雪国からの贈りもの「ルビンのこけし フレンド」

2025年1月、ANoTHER IMPERIAL HOTELに「ルビンのこけし フレンド」が登場しました。 それは伝統こけしにオマージュを込めながらも、新しい発想で創られたこけしです。こけしは江戸時代から東北の温泉地において土産物として売られるようになった木製の人形玩具。今回は、生産地である青森県黒石市を訪ね、この地で受け継がれる技と心をお伝えします。

しんしんと降る雪の世界の中にあって、どこか温もりを感じさせるルビンのこけし フレンド。

“はじめまして”
白い雪の世界から、そんなかわいらしい声が聞こえてきそうな気がしませんか?

オレンジやゴールドの横縞模様の衣装をまとったこのキュートな3体は、津軽こけしの産地、黒石市で作られているANoTHER IMPERIAL HOTELオリジナルカラーのルビンのこけし フレンド。背丈は、手のひらでそっと包めるくらいの8センチ。よく見ると、髪型や表情などそれぞれ異なるのがわかります。

風情あふれる中町こみせ通り。「重要伝統的建造物群保存地区」や「日本の道百選」に選定されている。

「中町こみせ通り」は、黒石市の中心部にあります。「こみせ」とは、雨や雪から人々を守る木造のアーケードのことで、江戸時代に造られた後、今も造り酒屋や呉服店などが軒を連ね、藩政時代の面影を伝えています。

こけし作りの伝統技術に新しい発想が加わり生まれた「ルビンのこけし」とは?

ルビンのこけしの制作を手がける「阿保こけしや」の工房にて。手前がアナザーインペリアルホテルカラー。その後ろは初期モデルと試作モデル。

ところで、「ルビンのこけし」っていったい何?

そう思われた方も少なくないかもしれません。ルビンのこけしとは、東京に本店を置く老舗百貨店「松屋」の地域共創プロジェクト※で、青森県黒石市とコラボレーションして生まれた新しいこけしのこと。グラフィックデザイナー 佐藤卓さんがデザインし、壺のシルエットが向き合った顔に見える多義図形「ルビンの壺」にちなんで、この名前がつけられました。3体のこけしを並べると凹凸がぴったりフィットすることから、人と人とのつながりを表し、よきご縁をつなぐといった意味も込められています。事実、ルビンのこけしは開発から発売に至るまで、さまざまな人のつながりによって誕生したのです。
※地域の伝統工芸や産業、文化と協業し、地域の魅力を発信する取り組み。

黒石市×「松屋」の地域共創の取り組みから生まれた「ルビンのこけし」

「ルビンのこけし」開発メンバー。左からグラフィックデザイナーの佐藤卓さん、こけし工人の阿保六知秀さん・正文さん親子、右端は松屋銀座・地域共創プロジェクトリーダーの柴田亨一郎さん。

日本人なら知らない人はいない東北の郷土玩具、こけし。その伝統に現代の感覚を加えて、新たなデザインに昇華できないだろうか―。前例のないもの作りがスタートしたのは2022年のことでした。

松屋銀座・地域共創プロジェクトリーダーの柴田亨一郎さんは、東北の個性豊かなこけしの中から、とりわけ表現様式が多彩でバラエティー豊かな津軽こけしに着目し、次代につながる新しいこけしの創造主として、グラフィックデザイナーの佐藤卓さんにデザインを依頼。佐藤さんは、二次元上にルビンのこけしを生み出しました。

そして、その作り手に選ばれたのが、津軽こけしを代表する名工、伝統工芸士の阿保六知秀(あぼ むちひで)さん・正文さん親子です。伝統工芸の世界にはない独自の形をしたルビンのこけしは、手仕事を生業とする匠たちの手で、一つ一つ、丹念に作り出されているのです。

伝統と技を未来に伝える「こけし工人」を訪ねて

伝統こけしを制作する職人のことを「こけし工人(こうじん)」といいます。職人や職工ではなく、工人。そこには優れた技術でものづくりをする人、という意味が込められています。
では、作り手である工人たちはルビンのこけしにどのような想いを寄せているのでしょう。黒石市にある2軒の工房を取材しました。

まず訪ねたのは、前出の阿保さん親子が営む「阿保(あぼ)こけしや」。
黒石駅から車で約20分のところにある工房では、父で師匠の六知秀さんと、その背中を追い続ける正文さんが、日々、ノミを手に轆轤(ろくろ)に向かっています。
観光客の見学もある工房ですが、二人だけのときは木を削る音と轆轤のモーター音だけが響く中、集中した作業が続きます。

轆轤の回転にあわせてノミを当てる角度を調整しながら削っていく。指先と全身が一体となる瞬間。

六知秀さんは、工人歴58年の大ベテラン。大工の息子として生まれ、自身も将来は大工を志す中、中学3年生のときに出会った津軽こけしの工人、佐藤善二さんに筋のよさを見込まれ内弟子になったのが、この道に進むきっかけでした。以後、住み込みで12年の修業を続け、後に自宅に工房を開き、こけしを制作。2013年には「全国こけしコンクール」で最高賞の内閣総理大臣賞を受賞するなど、津軽こけしを代表する名工として現在も活動中です。

経験を積んだ今も、正文さん(左)にとって、父・六知秀さんは「尊敬すべき人。永遠に追い続ける対象」だという。

そんな六知秀さんに突然舞い込んだのがルビンのこけし作り。
「初めてデザインを見たとき、これは“ヤバい”と思った」といって笑う六知秀さん。作業から離れると、温和でお茶目な人柄がのぞきます。
「我々も、今まで伝統を残しながら遊び心のあるものを作ってきたけれど、ルビンのこけしはその伝統から遠いものに思えて、最初は抵抗があったね」

それでも引き受けたのは、ルビンのこけしが示す未来に可能性を感じたから。

「試しに作り出して意識が変わったの。この新しいこけしを見た人が“かわいい”と思って、こけしに興味を持ってくれれば、伝統こけしのファンも増えるんじゃないか。地域の文化をつなぐ意味でも、自分は伝統こけしにあぐらをかかず、新しいことを受け入れるチャレンジャーでいたい。ルビンのこけしが、そう教えてくれたんです」。

お二人が手にしている作品はこちら

本モール限定 アナザーインペリアルホテルカラー。

本モールだけでなく、バレンタインデーに向けて松屋銀座7階でも期間限定(1月30日~2月14日)で発売される、チョコレートカラー。色は違えど、形は同じ。回転させるとキスをする愛らしさが人を惹きつけます。

「伝統こけしを進化させ、次代につなげてくれるもの、それがルビンのこけし」

父、六知秀さんの話をそばで静かに聞く正文さん。幼少期から父のこけし作りを見てきた正文さんが工人の道を志したのは、大学卒業後の2005年春。
「大学では農業土木を勉強していましたが、自分が本当にやりたいことを自問自答した結果、やっぱりこけし作りだと。それで卒業と同時に父に弟子入りしました」

そこからは六知秀さんの作品を模倣して作る修業の日々。けれど、5年ほどは納得のいくものができなかったといいます。

「ようやく父のこけしに似せられるようになると、今度は自分らしさを追求するようになりました。どれをとっても自分のこけしだと思えるようになるには、10年ほどかかりましたね」

そんな正文さんにとってルビンのこけしは、伝統こけしを進化させ、次代に伝える方法を示す存在なのだとか。
「決まったデザインの通りに作るという意味では従来のこけし作りと異なりますが、制作はすべて手作業。伝統的な方法にのっとっています。それでいて、色や形の新しさでこれまでこけしに縁のなかった若い世代の注目を集める。こけしの新しいスタイルができたと思っています。この制作を始めて、私がつくるこけしにも、新しい色や形を取り入れるようになりました」。

Data
阿保こけしや

青森県黒石市花巻字花巻34-3
TEL:0172-54-8865
営業時間:9時~18時
不定休

「大切なのは、集中と勢い。そこは伝統こけしと一緒だね」

完成間近のルビンのこけし。縞模様の絵付けを行った後、最後に顔を描く。

続いて訪ねたのが、こけし工人でねぷた絵師の北山盛治さんが主宰する「民芸工房 北山」。
もともとバイクや自転車の販売業を営んでいた北山さんは、郷土芸能や民俗芸術への関心の高さから、1982年より木地づくり(削り出して形を整える作業)の修業を始め、こけし作りを行うようになりました。ねぷた絵師としての活動で培った描彩技術も取り入れた独自の作品に定評があります。

工人として35年のキャリアを持つ北山盛治さん。「乾燥を防ぐため、寒い時期でも工房の窓は少し開けている」と話す。

その高い技術を買われ、ルビンのこけしでは初期モデルの制作から関わることに。
「当初は、これだという色に辿りつくまでに7回くらい試作を繰り返したかな。今はもう体に馴染んで、木材を削るところから絵付けして完成させるまで、1つにつき、だいたい30分くらいでできるようになったけどね」と北山さん。

それでも顔を描くときは緊張するといいます。
「ルビンのこけしは目もまん丸だったり、四角かったり、ちょっと縦長だったりするから。でも、緊張して硬くなるんじゃなくて、緊張感を持って勢いで描くのが大事。そこは伝統こけしを作るのと変わらないね」

Data
民芸工房 北山

青森県黒石市浅瀬石字川合152-6
TEL:0172-52-5959
不定休

「ANoTHER IMPERIAL HOTEL」がお届けする
こけし工人の手仕事による唯一無二の「ルビンのこけし フレンド」

ウィーーン、カリカリカリカリ……。
轆轤のモーター音に混じってノミで木を削る摩擦音がリズミカルに響く工房内で、一つ一つ作り出されるアナザーインペリアルホテルカラーのルビンのこけし フレンド。

原料となる木は、ほどよい硬さを備えたイタヤカエデ。原木の調達後、適度なサイズに切り出した状態で、約1年乾燥させ、そこからオレンジやゴールドといったキーカラーに色付けしたキュートなこけしが誕生します。

アナザーインペリアルホテルカラーのデザイン画。この1枚をもとに繊細な作業を通してこけしが生まれる。

その木材を轆轤の軸の先端に取りつけ、台(うま)に固定してノミでゆっくりと削っていく。

こけしの形ができてきたら、仕上げ用のノミで削って整え、絵付けへ。轆轤を回しながら、筆で縞模様などを描く。こけしに命を吹き込む瞬間。

木のぬくもりと津軽こけしの歴史を体感できる場所「津軽こけし館」

江戸時代を端緒に、今日まで伝承されてきたこけし。その歴史や文化を知りたくなったら訪ねたいのが、黒石市にある「津軽こけし館」。ここでは津軽系を中心に全国のこけし作品約4000本が展示され、産地ごとの特徴や成り立ちを知ることができます。また、津軽こけしの工人が日替わりで実施するこけし作りの実演やワークショップなどもあり、人の手から手へ受け継がれてきた伝承文化の奥深さを体感できます。

黒石市に現存する国指定重要文化財の商家と「こみせ」をイメージした外観が特徴。

津軽こけしの特徴を説明するスタッフの小野さん。

同館スタッフの小野真希子さんによると、こけしはもともと湯治場で販売される子ども向け玩具の土産品だったそう。そこから東北各県の産地に見合った模様や技法で根付いて発展し、師匠から弟子に型を継承されて今に至るのだといいます。 まさに、人と人、人と地域をつなげてきた立役者といえそうです。

津軽こけしを中心に、南部系、鳴子系、作並系など、東北各地で作られる12系統の伝統こけしの特徴もわかりやすく紹介されている。

Data
津軽こけし館

青森県黒石市大字袋字富山72-1
TEL:0172-54-8181
開館時間:9時~17時
入館料:1階無料、2階大人330円、高校生270円、小中学生160円
定休日:年末年始(12月29日~1月3日)

ANoTHER IMPERIAL HOTEL限定カラーのルビンのこけし フレンドから始まった、こけしの文化に触れる旅、いかがでしたか? 歳月を経ても、こけしが人の手の温もりから生まれること、そしてそれが人と人、心と心、笑顔と笑顔をつなぐことに、何ら変わりはありません。青森のまん中にある小さな町、黒石市からやってくるキュートなこけし。この先は、ぜひあなただけの物語を紡いでいってください。

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